人事の方向け
若手社員育成のための基礎知識

キャリアアップとは

「キャリアアップ」を直訳すると、「キャリア」は経歴や経験、「アップ」は高めるという意味があります。この2つの言葉を組み合わせた「キャリアアップ」とは、専門知識やスキルを向上させ、経歴を高めることです。
経験のある特定の業界や職種でより専門的な知識を身につけたり、より高度な職務経験を積んだりすることだと考えるといいでしょう。社内での昇進や昇給、契約社員から正社員へ雇用形態が変化するなども「キャリアアップ」といえるでしょう。
転職でも「キャリアアップ」のワードは登場します。今よりも更によい役職や肩書を得るために転職をすることも「キャリアアップ」と呼ばれています。

一方高めるだけではなく、横に広げるという考え方もあります。現在は、一直線の縦に役職を上げるだけではなく、組織の横ぐしを通る横断型のプロジェクトもあります。そのプロジェクトの中で、実績や経験を重ねていくこともキャリアアップと言えるでしょう。

さらに、会社組織内の人的ネットワークを作っていくこともキャリアアップと考えられます。

研修の考え方

たとえは若手社員のモチベーションをあげたいと思ったら、人事である皆様はどのような施策をこうしますか?

若手社員本人にモチベーションアップのためのキャリア研修をおこなう

と考えるかもしれません。
しかしながら、ここまで基礎知識を読んでいただいた皆様は、もうお気づきですね。

課題に対して、本人の中だけに要因を見出そうとすると、もし改善がみられなければ、いつまでも本人のせいになってしまいます。

もちろん問題行動に対して、本人に直接指導を行うことで改善されることもあるかと思いますが、問題が起きたら直接教育、問題が起きたら直接教育となると対処療法的な形となります。

そこで、一番近い上司に対して、若手部下育成のための教育を行うことで、課題が起きれば上司が関わっていくことで、持続可能な対策をとることが出来ます。

そのためには、業務指導だけではなく、個人の発達特性やメンタル状態などに関しての見立てをして、トライ&エラーを繰り返しながらかかわっていけるように、上司側に教育をして、実践できる場をつくることが人事の皆様の役割になります。

管理職から部下に関して相談を受けたら

人事である以上、人の問題について現場の管理職から相談があることがあるでしょう。

「うちの部署のAくんのミスが多い」
「Bさんは自分のことが見えていない」
「Cくんは報連相をしてといっているのに言ってこない」

これらは実際に私自身も相談をうけたことがありました。
ここで人事としてどうかかわりますか?

「Aくんにメモをちゃんととるように言ったらどう?」
「Bさんにできていないことをフィードバックしないと」
「私からCくんに言っておこうか?」

このようなアドバイスをされるでしょうか。
実はこれらは結局のところ対処療法です。

あくまで人事としてかかわるべきは、目の前にいる管理職であって、その管理職の部下ではないのです。

管理職は「自らの部下の課題」を問題として抱えていますが、人事はさらに一つ上の視点である『「部下の課題」を問題として捉えている管理職自身の課題』に関わっていくことになります。

そのため、
いきなり「こうすればいいよ」というアドバイスはぐっと我慢して、まずは傾聴的姿勢をとり、管理職自身に焦点を当てます。

「Aくんのミスが多いことでどんな影響があると考えているのか?」
「どんな傾向があると考えているのか?」
「これまでどんな関わりをしてきたのか」

これらを丁寧に聴いた上で、管理職自身の整理を手伝っていきます。
そして、「こうしたらどうかな」というのは人事のセリフではなく、管理職本人が発言することにこだわってください。

それが、管理職自身の成長に繋がっていきます。
そして、実践してもらったら振り返りの機会を設けましょう。
面談を通して、PDCAをまわしながら、管理職の抱えている課題を解決してもらえるように促していきます。

ここまででお気づきでしょうか。

人事は、管理職に「部下に対して関わってほしい」姿勢で、管理職に関わっていくのです。
その姿勢から、管理職は学ぶことが出来ます。

セルフキャリアドック制度とは

「セルフ・キャリアドック」とは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことをいいます。

入社時や役職登用時、育児休業からの復職時など、企業ごとに効果的なタイミングでキャリアコンサルティングを受ける機会を従業員に提供することにより、従業員の職場定着や働く意義の再認識を促すといった効果が期待されるほか、企業にとっても人材育成上の課題や従業員のキャリアに対する意識の把握、ひいては生産性向上につながるといった効果が期待されます。

(厚生労働省HPより)

就業規則に規定して、一時的な取り組みではなく、会社の決めごととして運用している企業も増えてきました。
運用方法は、様々で毎月実施する企業もあれば、半年~1年に1回キャリアコンサルティングを実施する企業もあります。
 そのキャリアコンサルティングを担当するキャリアコンサルタントも社内社外と様々です。

新入社員研修とは

主には、
・ビジネスマナー
・ビジネスコミュニケーション
・ビジネスマインド
・専門技能
等が考えられます。
しかしながら、現代の新入社員の特徴をふまえると、新人研修の期間に「自分の居場所をつくる」ことが重要です。
ちょっと困ったときに相談できる先輩や、名前を呼んで声をかけあえる同僚、いつもきにかけてくれる上司等、
居場所と思える条件は人によってさまざまです。

また、新入社員のエンゲージメント(職場貢献意欲)は入社直後が一番高いと言われています。
その理由は様々ですが、
「やりたい仕事と違った」という若手は少なくないでしょう。

そこで
新入社員研修では、トランザクティブメモリーに関する要素をいれることをお勧めします。
トランザクティブメモリーとは、組織の中で誰が何を知っているか、を知っていることを指します。

やりたい仕事と違ったと思ってしまう背景には、今の仕事が将来にどうつながっているのかがイメージできず、局所的に今の仕事をとらえてしまってることが考えられます。

その時に、自分の部署だけではなく、他部署の先輩や上司が、どのようなキャリアを経て、今のポジションについているのかに触れる機会を作ることで、そのイメージを醸成します。

さらに、トランザクティブメモリーを強化することは、ヘルプ先が増えることにも繋がり、彼らの居場所感の醸成にもつながるのです。

つまり、新入社員研修はビジネスをする上での知識や技術の向上だけではなく、彼らの環境側面に目を向けた要素を入れることが重要です。

まとめ

人事担当者の方は、日々組織の中で起こる人の問題に向き合っている事でしょう。

特に若手世代の悩み相談を受けることも少なくないと思います。
しかし、その都度都度で自分が対応していては、対処療法的であり、人事担当者の方も疲弊していきます。

そこで、直接的なサポートと同時に、管理職の若手社員の見立ての視点と関わり方を習得し、持続可能な若手育成をしていくことが必要です。

弊社の若手の動機づけと育成方法を知れば、やめることを決めてから「やめたいです」といいにくる問題とは無縁になるでしょう。